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読書:ゲノム編集とは何か

■サマリ

・従来の遺伝子組み換え技術1970年に端を発する古い技術であり,精度に大きな問題を抱えていた.たった1個の遺伝子を組み換えるために,科学者が1万回・あるいは100万回もの実験を繰り返した挙げ句,やっと1回だけ狙ったとおりに組み替えることができるという,極めて精度の低い技術であった.また,特定の箇所でしか遺伝子を切断・改変することができなかった.更に,汎用性に乏しく,ケースバイケースで様々な手法を使い分け・組み合わせる必要があった.
・これに対し,クリスパーと呼ばれるゲノム編集技術(2012年頃欧米で開発)では,ゲノム全体を対象として,科学者が狙った遺伝子やDNAを構成するGTCAを,1文字1文字ピンポイントで・複数箇所同時に,削除したり書き換えたりすることができる.失敗率(オフ・ターゲット効果)は現時点で1%以下,あらゆる動物や植物のDNAにも適用できる汎用性等を備えている.
・専門家が「高校生でも数週間で使えるようになる」と太鼓判を押すほど扱いやすい技術であり.従来の遺伝子組み換えに要していた期間やコストが劇的に改善された.例えば,従来ではノックアウトマウス(免疫機能等を破壊したマウス)の作成に1年はかかるところ,クリスパーでは3週間(作業そのものは1日もかからない.残りはマウスが成育するための期間)に短縮された.
 
■関与した人間
・(ダウドナ・シャルパンティエバークレー)・(チャン@ハーバード&MIT)
・最初に,分離したDNAに対して実験を行い論文を出したのは前者コンビだが,生きた細胞に実験して特許を取ったのは後者.現在係争中.
 
■クリスパーのメカニズム
・クリスパーとは「規則的に間隔を置いた短い(数十文字程度)回文(前から読んでも後ろから読んでも同じになる文)の反復」の略である.具体的には[回文][スペーサー][回文][スペーサー][回文][スペーサー]…という配列.
・ある特定のバクテリアのゲノムはこのクリスパー配列を持つ(1987年に阪大が大腸菌で発見).その後の2000年頃,スペーサーは,過去にこのバクテリアを攻撃したウィルスのDNAの一部であること・バクテリアはウィルスを見つけるとDNA部分をスペーサーと比較して,一致すると先制攻撃としてDNAを切り刻んで殺すことが分かった(つまりはバクテリアの免疫機構).
・メカニズム:クリスパー内部のスペーサーはガイドRNAという特殊なRNAを生成し,これがクリスパー近くの遺伝子から発現するタンパク質であるCsn1(現在はCAS9と改名)と結合して特殊な複合体を生成する(Csn1はDNAを特定の場所で切断するヌクレアーゼという酵素の一種).この複合体はガイドRNA部分に一致するウィルスを発見すると,塩基の相補性(DNAの2本螺旋は各対応部分でペアになる組み合わせが決まっている)によってRNA部分でウィルスに結合する.その後Csn1の構造が変化してウィルス側のDNAを切断する.
・その後,クリスパーは単に対ウィルスのみならずあらゆる生物のDNAに使用できること,切断後に特定の長さの塩基配列を挿入して再接続できることもわかった.
・ガイドRNAは人工的にプログラム・合成することができる.
 
■DNA・ゲノム・遺伝子に関する背景知識
・DNAとは物質(デオキシリボ核酸)・ゲノムとはDNA上の配列による情報・遺伝子とはその一部分のことである.遺伝子は,タンパク質の作り方を記憶している部位で,DNA全体の25%(狭義には1.5%)程度.
・人間のゲノムのサイズは32億対・GTCAの4文字が使えるので情報量としては約800MBでCD1枚よりやや大きいぐらい.
・人間のDNAの長さは約170cm
・人間のゲノムの5%はあらゆる生物に共通のものである.人間間でのDNAの違いは0.1%(320万塩基対)
・新生児は平均50〜100程度のゲノムの突然変異を持って生まれてくる
 
■法的問題等
・人類の改良(デザイナー・ベビー)〜治療との境界は何処か?
・遺伝子ドライブ:マラリアを媒介する蚊の遺伝子を改変して環境にダメージは?
・イギリスは生殖医療に関しては進歩的な姿勢.アメリカはキリスト教保守派の関係で消極的.
・精度が高いので,従来の遺伝子組み換え作物より安全かもという意見も.
 
■その他
エイズとペストは両者ともT細胞の特定の突起をとっかかりにして攻撃する.ペストの生き残りはT細胞にこの突起が無く,エイズも発症しづらい.
遺伝子治療は劇的な成果を上げる一方,死者も出てたりしていて,未だ不安定な感じらしい.
・クリスパーを効果的に運用するためには,ターゲットとなる遺伝子・メカニズムが理解されている必要があり(どの遺伝子が悪さをするかが分かってなければターゲッティングしようがないので),そのためにAIやビッグデータ技術が用いられ,グーグル・アマゾンが投資・参入している

 

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